Moonが掲げるバリューの一つに「experiment fast」があります。素早く実験を行うことは、あらゆる物事に取り組む際に必要な価値観であり、私たちのベンチャーが、発展し、成長し、世界に真の変化をもたらすためには欠かせないものです。私たちはこの価値観を周囲に促すだけでなく、自分たちで実践していかなかればなりません。
このバリューの真意を伝えるためには「experiment fast」とはどういうことなのかを、私たちが具体的に示さなければなりません。私たちは、Moonの未来を見据えて、情熱をもってその意思を可能性のあるビジネスへ変える実験を行ってきました。私たちはこの一年間、イノベーションを刺激する新しい方法を開発するために、ストーリーテリングの新しい形を創り、ベンチャースタジオの限界を超えようと努力を積み重ねてきました。
今年は、イノベーションとインスピレーションに溢れたユニークなストーリーテリングを行うために、「Moon Media」という新しい方法を試しました。Moon Mediaは、クリエイティビティやアントレプレナーシップに溢れる日本各地の人や場所にまつわるストーリーを紹介するために、2022年の夏に発足したメディアです。その目標は、ストーリーに命を吹き込むことであり、そうすることで私たち全員が創造的な魂を養い、インスピレーションをイノベーションへと変えていくことにあります。
四国・徳島県の山奥にある人口5000人ほどの町、神山町。地元産業は国内需要の減少に苦しみ、若者はより良い機会を求めて故郷から離れていきました。しかし、神山町はその後さまざまな取り組みを実行することによって、ただ生き残るだけでなく、クリエイティブとイノベーションのハブとして知られるようになるほど創造的な町へと進化していきます。
2022年の夏に撮影された「Kamiyama: A Small Town With Big Ideas」は、神山町の事業者、アーティスト、起業家へのインタビューを通じて、町の軌跡をたどります。このショートフィルムは、さまざまなコミュニティの人々が持つクリエイティビティやアントレプレナーシップを刺激するために創られました。
新しいビジネスやアイデアの発案は簡単ではありません。そこで、私たちは、これまで経験した数え切れないほどのアイディエーションセッションや未来の起業家とのワークショップをもとに、アイデアについて考え、よりクリエイティブになるための新しい方法を考案しました。
Moonの「Creative Toolkit」は、革新的なビジネスアイデアを発想するための簡単なカードゲームです。フレームワークを提供することで、より簡単に、楽しくアイディエーションを行うことができます。各デッキには、新しい技術、ビジネスモデル、デザイン哲学の3つのカテゴリーのカードが入っており、その組み合わせがチームのディスカッションを刺激します。QRコードを読み取ると、各カテゴリーにおける具体的な実例を紹介したウェブサイトを参照することもできます。
2023年、Moonは過去最大の実験として「Open Moon Program」を開始します。このプログラムは、新しいベンチャーを世に生み出すMoonの能力を拡大し、より多くの起業家やチームの創造的な可能性を解き放ちます。
あらゆる企業、スタートアップのチーム、個人、どなたでも参加できるMoonの新プログラムでは、問題意識を他者に共有可能な具体的なアイデアへと変える方法や、アイデアを事業として形にする方法のほか、投資を受けるためのピッチの機会を提供します。プログラムの詳細は、Moon Creative Labの公式サイトをご覧ください。
今年は、思いがけない「偶然の産物」があちこちで生まれたおもしろい一年でした。テニスベアを世に出してみると、日本ピックルボール協会がプラットフォームを利用していたり、Lullabyの事業売却の検討を進めると、日本で最も尊敬すべき企業のひとつであるピジョン社との協業ビジネスに発展したり。ほかにも、ファッション・サプライチェーンの完全リサイクル化を目指した素材開発を始めてみたら、世界中の企業・個人・アカデミアとのパートナー関係を構築できたこともありました。三井物産のある事業部とのゼロイチ構想が頓挫しかけたときには、Moonの社員から新しい切り口でビジネスアイデアの提案があったこともありました。メタジョブ!は三井物産の多くの事業パートナー様との新しい取り組みを始めることにもなりました。
マーク・トウェインは「Name the greatest of all inventors. Accident.(最も偉大な発明家は誰か。それは“偶然”だ)」という名言を残していますが、我々も良く知るポスト・イット®、電子レンジ、コーンフレーク、ペースメーカー、シャンパンなどなど、発明やイノベーションの多くが「偶然」起きたことは非常に興味深い話です。私はよくゼロイチで成功するプロセスやMoonがユニコーンを生み出すための正しい在り方は何かといった質問を受けることが多く、そんなときはいつも大好きなポテトチップスを食べながら(ポテトチップスもまた「偶然の産物」です!)こう考えます。
正しいプロセスや正解は後から整理して付け足せば良く、Moonができることはこういった「偶然の産物」が生まれやすい環境をつくり続けることではないだろうかと。「experiment fast」をMoonのバリューのひとつとしている理由は正にこれです。できるだけ多くの人たちがMoonで沢山の「experiment fast」を。できるだけ多くの人たちに、できるだけ多く、ほかの人がやらなさそうなことを実践してもらう。そんな場や機会を手を変え品を変え提供し続けることこそが、新しいイノベーションを生み出すMoonの本質なのではなかろうかと。
Moonは、来期から三井物産以外の企業や起業家にも門戸を開いて一緒にイノベーションを起こすことを狙う「Open Moon Program」を開始します。これ自体がMoonにとっての次なる「experiment fast」になりますが(失敗したらごめんなさい。そうしたら違う形をまた考えます)、これを通じてまたどれだけの新しい出会い・化学反応・イノベーションが生まれるか。今から楽しみで仕方がありません。
仲間であるMoonのみなさま、これからも人がやらないことをどんどんできるような場の提供を目指して、色々と工夫していくことを楽しんでいきましょう。これからMoonと一緒にイノベーションを目指していくみなさま、一緒に敢えて浮世離れをして、ワクワクするような商品やサービスをつくっていきましょう。
You must do the thing you think you cannot do.
Kaichi Yokoyama